一般人から見る異常者と自分達の境界線

昿野 洋一さんがOhmyNewsで書いた記事が、はてなブックマークでちょっと反響を呼んでいました。
私もブクマしてコメントもつけた上で、ちょっとダイアリーでもエントリを書いてみます。


ちなみに最初に断っておきますが、問題となっている光市母子殺害事件については、元少年は悪い事をしたと思いますし、量刑も死刑であってもかまわないと思っています。あと元少年弁護団の活動も問題に感じるし、裁判途中での方向転換もとんでもないと思っています。
(……とはいえ当事者でもないのに、知ったかぶりで人様の事件について書くのは嫌なんですけどね。しかし上の様にスタンスを明確にしとかないと、絶対噛み付く人が出てきますし……)

記事の悪くない点と、悪い点

なんだかはてブのコメントを見ると、この記事に攻撃してる人はたいてい「元少年の責任を国に転嫁している」か、「この記事書いた奴も異常者」となっています。
「この記事書いた奴も異常者」については後述するとして、まずは「元少年の責任を国に転嫁している」について見ていきましょう。


以下、記事より抜粋した部分です。

 要するに、こういった事件を起こす可能性を持った人間が少なくとも日本に2人はいたということになる。1人はいまこうして記事を書いているし、1人には死刑判決が下った。だから、元少年が死刑になっても、私は今後もこういった事件はなくならないと思う。


 本当は、被害者遺族と元少年弁護団の対決だけではなく、国の性に対する整備の欠陥についても考えられるべきではないだろうか?

昿野さんの言いたかった事は、ただ上記の引用部分だけではないでしょうか。


記事を全部眺めても「元少年は悪くない」などとはどこにも書かれていません。そう読み取った人は単に誤読してしまっただけでしょう。
ただし「元少年が悪いのは事実である」としっかり明記すべきだったとは思います。その点については掲載したOhmyNewsも、筆者の昿野さんも記者&編集者失格かもしれません。


そして

売春や性風俗がいいとは思わないが、思春期の少年の性のはけ口は考えないと、若者の性犯罪は減らないのではないだろうか?

と、性のはけ口の問題のように書いてありますが、そこはかなりピントがずれているよう思えます。これは悪い点だと言えるでしょう。


重要なのは性のはけ口ではなく、性教育です。そこを勘違いしちゃいけません。
「強姦はされた方が全然気持ち良くなれない上そもそも身の毛もよだつおぞましい行為であり、合意の上で臨む性行為はいくらでも気持ち良くなる可能性を秘めている」とは、どこの教科書にも書かれていない*1はずです。
いくら性器の名称や仕組みを教えたとしても、上記の基本を教えない限り性教育として落第だと言えるでしょう。


また理想を言えば「一人で行う自慰行為」の教育もあっても良いと思います。義務教育もしくはカルチャースクールで。
アダルトビデオやエロ本やエロゲー等の性的なオカズがほぼ必須となっている男性には理解しがたいかもしれませんが、物的オカズが必要なオナニーなど三流以下です。
風俗やアダルトグッズの助けが必要という男性も、私から言わせれば同じく三流以下です。
(ただし助けが一度も無いままでは、これもまた三流以上になれないので難しいところですが……)
まああまり詳しく書くのも本題と外れるので、ここでは書きません。(ヒント:幻肢痛共感覚


それと性教育の範疇を外れますが、アダルトビデオ等の『痴漢モノ』『強姦モノ』も無くすべきでしょう。
どこぞの団体が喚いている『擬似ポルノ』なんか放っておいて、そっちこそ真っ先に取り締まるべき対象に思えます。
どうしても無くさない(or無くせない)のであれば、その性行為の直後(=視聴者が見るのを止めない時点)に(劇中の)性犯罪者が復習され殺害されたり、被害者がPTSDになったり自殺する様子くらい描写すべきだと思います。
(まあそれでも裏モノとして流通する分はあるでしょうが、裏モノ自体取り締まりの対象なので別問題です。裏ではスニッフビデオだって存在する訳ですしね)


という風に記事の問題点を補足した所で、次の話にいってみましょう。

異常者との曖昧な境界

誤解されかねないので正直書きたくないのですが、私だってストーカーや性犯罪者の仲間入りしてた可能性は物凄くあるんです。
(昿野さんのようにおおっぴろげに書くつもりも必要もさっぱり無いですが)
たまたま運良くまともに育つ事が出来て、今や「痴漢する可能性がゼロ」の男性にまでなれただけなのです。*2


だいたいガキの時分でまともに成熟出来てるだなんて、幻想もいい所ですよ。
未だに道端で立ちションする60歳や、飲酒運転する40歳や、他人の持ち物を盗む50歳なんか、皆さんの周りでも山のように身近にいるでしょう?
私自身、20代後半でようやくしっかりしてきた*3と思えるようになった位だし、今後もまだまだたくさんの精進が必要な身です。


みんな『理想とされる成長』に対して、色々な方向に色々な勢いでズレていくことがあるだけなんですよ。成長のスピードも含めて。
そのズレ方によって、軽犯罪者や重犯罪者、多々の道交法違反者、犯罪者じゃないけど人格破綻者、アル中、ニコチン中毒、自己を省みないまでの自己犠牲者とか色々変化する訳です。
そこを考えない、無関係と思うことこそ問題だと、昿野さんは自身が攻撃されるのを覚悟してまで言いたかったのではないでしょうか。
「無関係だから放置する」だけでは、事態が一向に良くならない事は歴史も証明している*4筈ではないでしょうか?


話は若干ズレてしまいますが、精神系の疾患と、その結果の不幸な事件についても、似たことが言えるでしょう。
「被告は責任能力の問えない状態だった」という事件に対し、条件反射で「こんなキチガイは死刑にすべき」と安易に批判する人たちがいます。(mixi日記とか見ると分かりやすいですね。はてブよりさらにネットイナゴまみれ)
彼らのその考え方も非常にまずいです。
「自分や周囲が同じ状況にならない、なる訳無い」との思い込みが、精神疾患への偏見を深め、結果として治療を敬遠したりさせたりする事になってしまっています。(通院を恥じたり、服薬を嫌がったり)


私自身、以前IT産業の激務でうつ病の類を患う経験がありました。
そこからは無事回復出来た(まだちょっと後遺症アリ)のですが、それだってたまたま運良く重症にならなかっただけなんです。
理解のあった周囲と、私自身の異常なまでの客観的思考能力、前もって知っていた精神疾患の知識が、病気の最中の悲観的主観を叩き伏せ、自殺を思いとどまらせ、自暴自棄に犯罪に走らせず、適切な治療(服薬)*5を継続出来たに過ぎないのです。
もし周囲の偏見があったり、会社が仕事の継続を強要したり、私自身の客観的思考能力が低レベルだったり、精神疾患に対する知識が不足していたりすれば、全然違う結果になったでしょう。
数十年ひきこもることになったか、自殺していたか、もしくは悲惨な事件の中心人物として報じられるかしれません。


不幸な事件の主役となる結末は、性犯罪方面でも精神疾患方面でも、私の人生のすぐ隣にしっかり用意されていたのです。


もしこの文章を最後まで見て頂けた方がいるのなら、是非とも他人事な考え方を止めて下さい(or止めるよう勧めてあげて下さい)。
「無関係な、キチガイや狂人のする事」としてしまうのは、人間の心理として非常に安心出来る方法でしょうね。
誰だって、自分や周囲が犯罪者になったり、犯罪被害者になったりしたくはないのです。
報道される犯人を無関係な遠い世界の存在として扱う事は、自分が犯罪に関わってしまう可能性を忘れさせてくれる魅力的な方法ですよね。
ですがその逃避は、決して現実を助けてはくれないのです。(自己の内面、精神の助けにはなりますが)


さあ、ネットイナゴ щ(゚Д゚щ)カモーン!

*1:現在使われてる教科書は見て無いので、自分が学生自分に見た保健体育の教科書の記憶を参照しました。間違い等指摘があればお願いします。

*2:戦争のような異常な状況下におかれた場合は保障しかねますけどね。しかしそれはそれで痴漢ではなく強姦するのではと思いますけど。あ、震災とかではそんなことしないのであしからず。

*3:そんなもんだから、某月姫なる作品中の『幻視同盟』で、遠野志貴が通り魔に対する説教をやや厳しい意見に感じてしまいます。

*4:ナチス・ドイツの暴走とかね。「ナチス共産主義者を弾圧した時、共産主義者でない自分は行動しなかった。ナチスは次に社会主義者を弾圧した。社会主義者でない自分は抗議しなかった。ナチスは、学生やユダヤ人に弾圧の輪を広げ、最後に教会を弾圧した。牧師の自分は立ち上がった。時すでに遅かった。『抗議するには誰のためではない、自分のためだ』」という台詞を見れば分かります。

*5:服薬をせずどんどん悪化している人間が身近にいます。お願いですから勝手に服薬を止めたり一気に飲んだりしないで、医者と相談しながら用法容量をお守り下さい。